保険でも良い入れ歯は作れる?──歯科医師が本音で語ります(前編)|伊丹とく歯科|伊丹市で“丁寧すぎる”歯科治療。精密な技術と審美の追求

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医療コラム

保険でも良い入れ歯は作れる?──歯科医師が本音で語ります(前編)|伊丹とく歯科|伊丹市で“丁寧すぎる”歯科治療。精密な技術と審美の追求

保険でも良い入れ歯は作れる?──歯科医師が本音で語ります(前編)

友人に“保険で十分”と言われた」「ネットでも“保険でも良い入れ歯は作れる”と見た」──。

そんなお声を、私たちは毎月のように患者さんからお聞きします。

特に、初めて入れ歯を検討される方や、現在の入れ歯に満足されていない方にとっては、切実な問題でしょう。

結論からお伝えすると、本当に満足のいく、長期的に快適な入れ歯を保険の範囲内で安定して作るのは難しい、というのが、私たちが日々入れ歯治療に向き合う現場の歯科医師としての率直な実感です。これは決して、保険診療そのものを否定するものではありません。ですが、患者さんが期待する「良い入れ歯」と、現在の保険制度が許容する範囲には、残念ながら大きなギャップが存在するのです。

このギャップは、単に「材料が安いから」という単純な話ではありません。患者さんからは見えにくい、制度の“内側”にこそ根本的な問題が隠されています。

 

 

「良い入れ歯」=材料ではなく「時間と技術」が9割

入れ歯づくりで何よりも重要なのは、以下の3つの工程です。

1. 精密な型採り

2. 正確な噛み合わせの採得

3. 装着後の丁寧な調整

 

これらはすべて、高価な素材を使うことよりも、いかに「緻密な診療プロセス」と「熟練した技術」を投入できるかにかかっています。

例えるなら、高級な楽器の素材だけを揃えても、調律師が音を調整しなければ良い音が出ないのと同じです。

 

1. 精密な型採り

入れ歯の製作において、最初の、そして最も重要な工程が「型取り」です。これは単に歯の形を写し取る作業だと誤解されがちですが、実はその何倍も奥深く、入れ歯の最終的なフィット感を左右する非常に繊細な作業なのです。

 

単なる「歯型」ではない

型取りは、入れ歯の土台となる部分を写し取る作業です。

しかし、単に静止した状態の「歯型」を採るだけでは、良い入れ歯は作れません

 

「お口の動き」を読み解く重要性

私たちは食事中や会話中に、お口の粘膜や頬、舌を常に動かしています。そのため、型取りの際には、これら「お口の中の粘膜の動き頬や舌の筋肉の癖」、さらには「食べ物を咀嚼したり、言葉を発したりする際のダイナミックな動き」まで、細かく読み取ることが不可欠です。

 

保険診療と精密型採りの壁

一般的な保険診療では、この型採りにかけられる時間は限られています

しかし、本当に精密な型採りをするには、複数の材料を使い分けたり、患者さんの筋肉の動きを再現しながら行う「機能印象」と呼ばれる特殊な方法を用いるなど、時間と手間を惜しまないプロセスが不可欠です。

 

最初のズレが、すべてを台無しに

この最初のステップでわずかでもズレが生じると、その後のすべての工程に悪影響を及ぼしてしまいます。結果として、いくら後工程で頑張っても、最終的に「痛みがある」「外れやすい」「うまく噛めない」といった“合わない入れ歯”が出来上がってしまうのです。

 

 

2. 「噛み合わせ」は数ミクロンの世界で調整する

噛み合わせの採得は、単に上下の歯を合わせるだけの単純な作業ではありません。それは「数ミリ単位どころか、数十ミクロンの世界で、顎の関節や筋肉のバランスを見極める、極めて繊細な作業」です。

 

「本来の噛み合わせ」を再現する

人間の顎は、上下左右、そして前後に複雑に動きます。

この複雑な動きを正確に再現するためには、「咬合器(こうごうき)」と呼ばれる専用の器具や、精密な検査を駆使して、患者さん本来の最も安定する噛み合わせの位置を正確に記録する必要があります。

 

不正確な噛み合わせが招くトラブル

この工程をおろそかにすると、食事の際にうまく噛めない、顎が疲れる、外れやすいといった様々なトラブルにつながります。

噛み合わせは、入れ歯の快適性を左右する非常に重要な要素なのです。

 

 

3. 入れ歯は「調整」こそが作品の仕上げ

入れ歯は、完成したら終わりではありません。むしろ、そこからが本当の勝負です。

 

装着後の違和感は当たり前

どんなに精密に作られた入れ歯でも、お口に装着した瞬間から、わずかな違和感や不具合が見つかるのはごく普通のことです。

 

調整で完成度が高まる

痛み、外れやすさ、発音のしにくさ、食事での違和感──

これらはすべて、装着後に一つひとつ丁寧に微調整を繰り返すことで解消していくべき問題です。良い入れ歯であればあるほど、この「調整」が成功の鍵を握ります。

 

保険診療の矛盾

しかし、現在の保険制度では、この調整作業に対する点数がほとんどありません。

そのため、患者さんのために時間をかけて丁寧に調整を繰り返せば繰り返すほど、医院の赤字になってしまうという矛盾が生じています。

結果として、患者さんが本当に満足できるまで、何度も来院して細かく調整を繰り返すことが難しいのが現実です。

 

 

なぜ、保険診療では「時間と技術」を十分に投入できないのか?

本当に良い入れ歯を作るには、時間と手間が欠かせません。しかし、現在の保険制度には、この「時間と手間」を正当に評価する仕組みが十分にありません。

 

歯科医師側の現実

入れ歯治療は、歯科医療の中でも「総合格闘技」とも言われるほど、高い専門性と豊富な経験が求められる分野です。

歯周病、虫歯、外科、審美…あらゆる分野の知識と技術を統合して治療にあたる必要があります。

しかし、現在の卒前教育だけでは、このような難易度の高い入れ歯治療の症例を十分に経験する機会はほとんどありません

臨床に出てから何年もかけて、やっと一人前になれると言っても過言ではないのです。

ところが、保険制度の枠内では、一人の患者さんにじっくりと時間をかけるほど、医院の採算が合わなくなってしまうのが実情です。

結果として、どうしても「短時間でそれなりの形にまとめる」方向へ流れやすくなります。

ここに「本当に良い入れ歯」と「保険でできる現実」のズレが生じます。

 

歯科技工士側の現実

入れ歯を実際に製作する歯科技工士の世界もまた、深刻な人材不足に直面しています。特に、難易度の高い入れ歯を作れる熟練の技工士はごくわずかです。

技工士に支払われる保険の技工料は、彼らの熟練の技と時間に見合わないのが現状です。

そのため、高い技術を持つ技工士ほど、時間をかけて丁寧に作る保険の仕事は請けにくくなってしまいます。

患者さんからは見えにくい「裏側の品質」が、制度の都合で担保されにくいのです。

 

 

まとめ:保険の入れ歯は “制度の枠内での最善”

とく歯科の外観

以上が、保険で「本当に良い入れ歯」を作るのが難しい主な理由です。

時間と手間をかけるほど採算が合わない「制度上の問題」

熟練した技術者を確保しにくい「製作体制の問題」

最も重要な調整を評価しない「報酬構造の問題」

これらの課題があるため、安定した品質の入れ歯を患者さんに提供し続けることが困難なのです。

ですが、口腔内の条件が良ければ、保険でも一定の満足に至るケースも確かに存在します。後編では、「保険でうまくいく人・いかない人の違い」や、「なぜ近年、難症例が増えているのか」について、現場目線でお話しします。

 

 

ページ監修医師

  徳田進之介

院長 徳田進之介

兵庫県伊丹市・新伊丹駅から徒歩3分の「伊丹とく歯科」院長。

患者様一人ひとりに寄り添い、納得いただけるまで丁寧に説明し、高品質な治療を提供することを大切にしています。

特に 「しっかり噛める」「長く快適に使える」 義歯治療や、見た目の美しさと機能を両立した審美歯科 に力を入れています。既製品では満足できない方、ワンランク上の精密な治療を求める方に、最適な選択肢をご提案いたします。

「本当に自分に合う治療を受けたい」

そんな方のための歯科医院を目指しています。

医院情報

とく歯科の外観
伊丹とく歯科
兵庫県伊丹市平松4丁目3-12
050-3146-4274
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